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同じく全国に支店を持つ外資系チェーンのタワーレコードと比べ、HMVは洗練された店づくりをするようになり、そういうイメージが定着していた。
その時期、タワーが手作り看板に手描きのポップをべたべたと張り雑多な店づくりをしていたのに対し、HMVは綺麗に印刷された看板に、印刷された解説ポップを主流とし始めた。

それは、一見、店内を見回すと洗練された、おしゃれなお店を演出するのには効果的な戦略だったと思もう。
ただ、それは、実のところ、同時に各店舗の個性を殺す事にもなった。印刷された看板やポップは、全国の各店舗で使われ、要は全国土のHMVに行っても同じアーティストのCDがプッシュされているという現象を生み出した。

そして、その看板やポップという、CDを送り出す僕らレーベル側としては最も大切な宣伝ツールは、ある種のパッケージ化された広告として販売される事と なった。全店で看板をつけるのパッケージで、うん十万円。全店で視聴機にいれて小さいポップをつけるのでこれまた運十万円というふうに。

何も、この商法はHMVだけのものではない。タワーだってやっているし、新星堂や、そのほかのチェーンストアでもやっていることだ。
ただ、HMVのそれは、タワーと比べるともっと徹底されていた。

タワーは、そんなパッケージ広告販売の傍らで、従来の雑多な手作り看板に手描きポップを作り続け、店頭でプッシュする商品は、ある程度各店舗のバイヤーの 耳や感性に委ねられる部分が残っており、バイヤーの琴線に触れたり、プレゼンがうまくいった時は、無名の新人でも大々的にプッシュしてくれた(もちろん、 これにもお金を払わなくてはならないが)。

ただ、HMVは、タワーとは対照的に、全国規模で同じアーティストをプッシュする方法を強めていった。その為、全国どこのHMVに行っても店頭で展開され ているCDは同じアーティストのもので、看板もポップの文章も同じものになっていった。ひどい時は、ポップは僕らレーベル側が手作りし、それを全店舗に配 ることまでした。

その結果は、想像どおりだった。
HMVの各店舗は、ものすごいスピードで画一化されていき、個性を失っていった。その上、各店舗での裁量が制限されたことで店舗のバイヤーのやる気が明らかに低下し、直接プレゼンに行っても、熱心に話を聞いてくれる人が明らかに減っていった。
それは、本部からおしつけられるアーティストの作品を、看板をつけてならべるだけの単純作業に変わり果て、挙句の果てには、看板をつけプロモーションビデ オが見られるように作られた店頭展開の装置は、全く人目につかないところに無理やり置かれたり、その装置自体が壊れていてそのまま放置されている物まで出 てきた。

ここまで行くと、もう、お客さんもそうだが、それ以上に僕ら送り出す側もHMVに対しての意識に変化が現れるのも当然だった。

お金を持っているレーベルの作品のみが店頭を飾り、無名だが輝きを放つ作品は棚の中にひっそりとしまわれ、時には在庫されることすらなかった。

僕の経験上で言えば、無名の海外のバンドを発売した時、HMVはほとんど取り扱ってくれなった。ただ、ほどなくしてタワーレコードでその作品に火がつくやいなや、やっと重い腰をあげて取り扱ってくれるようになった。


HMV渋谷の閉店。
これは、確かに一つの時代の閉幕を意味する。
が、これは時代の変化や、音楽販売を取り巻く環境の変化が招いた結果ではなく、HMVの経営姿勢が招いた結果だと、少なくとも僕は思っている。
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